火災通報装置とは

火災通報装置とは


火災が発生した場合において、手動起動装置又は、自動火災報知設備の作動と連動することにより電話回線を使用して消防機関に電話し、あらかじめ録音された音声メッセージにより通報するとともに、通話を行うことができる装置です。


これにより、パニックに陥りやすい火災発生時であっても、迅速かつ的確に消防機関へ連絡がいくようになってます。


また、あらかじめ連絡先の電話番号を登録しておくことで、消防機関以外にも連絡できる機能を備えたものもあり、火災発生時の初期対応を円滑にする目的があります。




法律


火災通報装置は、病院や養護老人ホーム、障碍者施設をはじめ、ホテルや旅館などに設置義務が課せられており、設置義務に関する法律が改正された2015年以降、消防点検の際に指摘や指導を受けることが増えています。


2012年5月にホテル火災、2013年2月に認知症高齢者グループホーム火災などの火災被害を受け、消防用設備等の設置基準等6項目の改正が実施されました。


2018年3月31日までは猶予期間である「経過措置期間」でしたが、2018年4月1日以降は消防法令違反の対象となっています。




火災通報装置の仕組み


火災通報装置の構成は以下の機器類で機能する仕組みになっています。


・火災通報装置本体

・火災通報装置用電話機

・連動停止スイッチ


「火災通報装置本体」は、自動火災報知設備と消防機関をつなぐための装置で、予備バッテリーを備えているため停電時でも作動するようになっています。


「火災通報装置用電話機」は、消防機関からの逆信を受け、火災現場と消防機関が直接連絡するために使用します。


逆信とは、消防機関に対して自動的に通報した発信に対して、消防機関から折り返しの発信をうけることを指しており、逆信を受けることでより正確な現場の火災情報や避難状況を共有することを目的にしています。


「連動停止スイッチ」は、火災通報装置と自動火災報知設備の連動を解除するために使用するもので、自動火災報知設備の点検や訓練時などの際に、一時的に連動を停止するために用いられます。


仮に、連動停止スイッチがないと、自動火災報知設備の点検時にも消防機関へ緊急連絡が発信されるため、誤発報を防ぐための装置です。




音声内容


火災通報装置の音声内容は、原則として「該当施設の住所と名前」です。


録音内容については管轄の消防署と前もって打合せすることが求められます。


録音内容は機械音声として火災時に自動的に発信され、通報を受けた消防機関が逆信(折り返し電話)する決まりです。


逆信によって現場の状況を伝えることができた場合は、状況に応じた対応がとられますが、仮に、現場が混乱状態にあり、逆信に対応できない事態が続いた場合、消防車、救急車が手配されます。


逆信時に『誤報』と伝えると消防機関が手配されない場合と『誤報』と伝えても念のため消防機関が手配される場合があります。

管轄の消防署によって、少し対応が変わるようです。


火災通報装置は通常の電話回線だけが使用できます。IP電話や光回線、携帯電話など充電の問題や回線の問題があります。

火災通報装置に使われる電話回線は最優先される仕組みになっており、火災通報装置の発信中は他の電話、faxは強制的に遮断されます。

消防設備点検時に毎回、消防機関に通報試験をするたびに、電話、faxが強制的に遮断されてしまうと、業務に支障がきたすので、火災通報装置に使われる電話回線はアナログ電話回線で火災通報装置だけに使用する専用回線を開通するのを推奨いたします。




設置場所


火災通報装置の設置場所は建物内の防災センター、中央管理室、守衛室等といった常時、関係者が管理しやすい場所に設置するのが原則です。


自動火災報知設備の受信機のすぐ近くに設置することが多く、管理室やナースステーション等が複数存在するような大型施設になると火災通報装置に加えて、遠隔起動装置の設置も必要となりますので、管轄の消防署と打合せが必要です。




設置義務


原則として火災通報装置の設置義務は主に以下の建物になります。


・旅館、ホテル、簡易宿泊所

・病院、診療所

・高齢者福祉施設(利用者の入居または宿泊を伴うもの)

・延床面積が500㎡を超える劇場、集会所、キャバレー、遊技場、性風俗店、カラオケ、個室ビデオ、工場、スタジオ、物品販売および百貨店、文化財など

・延床面積が1000㎡を超える料理店、飲食店、学校、図書館、浴場、車両停車場、車庫、神社など


上記の設置義務をわかりやすく解説すると、旅館やホテル、病院、高齢者福祉施設は、無条件で火災通報装置を設置しなければいけません。(宿泊施設は、例外なく設置義務がある)


その他の用途の建物は「延床面積」によって設置義務が変わります。

上記の設置義務基準は消防法であり、各市町村の条例は考慮されていません。

管轄の消防署と行政担当者等に設置義務について相談することをお勧めします。




設置義務の免除 


火災通報装置の設置義務が免除される基準は以下の通りです。


・消防機関から著しく離れた場所

・消防機関からの距離が500m以下

・消防機関へ常時通報できる電話を設置してある


火災通報装置の設置義務免除の基準をめぐっては、法律と管轄の消防署で食い違う場合があります。


法律上は免除されるはずなのに、管轄の消防署からは設置を求められる場合です。


小さな旅館や宿泊数が少ないホテルといった場合は、このようなことが生じやすいため、管轄の消防署と入念な「消防協議」を実施し、議事録で記録しておくことをお勧めします。


一般的な旅館やホテル、病院、高齢者福祉施設は、火災通報装置の設置義務に関する緩和措置は対象外です。

火災通報装置の設置は必ずしなければいけません。




自動火災報知設備との連動


火災通報装置の設置義務がある建物は自動火災報知設備の設置義務になります。


火災通報装置と自動火災報知設備を連動することで、効率的な初期対応が実現します。


連動させることで火災感知器が火災を感知した時点で自動的に消防機関へ通報され、被害の拡大が抑えられる確率が高まります。


旅館やホテルといった不特定多数の人が宿泊する施設も対象とされていますが、誤作動や誤報が多いことから、あえて連動させずに「手動対応」にしている場合もあります。


ユニットバスがあるホテルでは浴室内で生じる湯気や熱気を感知器が感知して誤作動する場合が多発しています。

その為、不要な緊急出動を生む場合があります。


火災通報装置と自動火災報知設備を連動させるかどうかは、管轄の消防署と協議し、万が一の時でも確実に機能する状況を作ることが求められます。


仮に連動させずに火災が発生し、通報が出来ずに火災被害が起きた場合は、建物の責任者へ処罰がおりるかもしれないリスクを考慮すると、火災通報装置と自動火災報知設備の連動をお勧めします。




まとめ


火災通報装置の設置義務は、原則として旅館やホテル、高齢者福祉施設といった宿泊を伴う施設は必ず適用されます。


法律改正の周知が行き届いておらず、設置義務の対象であるにもかかわらず、設置していない場合や設置する予算がなく設置していない場合もあります。


火災時の人命に、かかわってくる設備ですので、設置義務があるか確認してみてください。


火災通報装置の設置義務については、消防設備の業者や管轄の消防署、行政担当者に確認、相談をお勧めします。