何故、梅雨の時期に食中毒が増えるのか?
梅雨の時期に食中毒が増える主な理由は、細菌類の活動が活発になるためです。
食中毒を引き起こす原因菌の多くは、暖かい気候を好みます。高温多湿になる梅雨の時期には、原因菌の増殖活動が盛んです。
代表的な原因菌のなかでは、腸管出血性大腸菌(оー157など)、カンピロバクター、サルモネラなどの活動が目立ちます。
食中毒の増加傾向は、梅雨の時期の食事や体調とも無縁ではありません。一般的に、気温が高くなると冷たいものが美味しく感じられやすく、食品を加熱しないまま食べるケースがふえます。
さらに体調面では、厳しい暑さのため体力が低下しがちです。
梅雨には、食中毒の原因菌が盛んに増殖するなか、食品を加熱処理せず摂取する傾向があり、食中毒の多発につながっています。
知っておきたい食中毒の主な原因
腸管出血性大腸菌(оー157)
牛や豚などの家畜の腸の中にいる病原大腸菌の一つで、оー157などがよく知られています。
毒性の強いベロ毒素を出し、腹痛や水のような下痢、出血性の下痢を引き起こします。
腸管出血性大腸菌は食肉などに付着し、肉を生で食べたり、加熱不十分な肉を食べたりすることによって食中毒を発生します。
乳幼児や高齢者などは重症化し、死に至る場合もあります。
カンピロバクター
牛や豚、鶏、猫や犬などの腸の中にいる細菌です。この細菌が付着した肉を、生で食べたり、加熱不十分で食べたりすることによって食中毒を発症します。
また、吐き気や腹痛、水のような下痢が主な症状で、初期症状では、発熱や頭痛、筋肉痛、倦怠感がみられます。
サルモネラ属菌
牛や豚、鶏、猫や犬などの腸の中にいる細菌です。牛・豚・鶏などの食肉、卵などが主な原因食品となるほか、ペットやネズミなどによって、食べ物に菌が付着する場合もあります。
菌が、付着した食べ物を食べてから半日~2日後ぐらいで、激しい胃腸炎、吐き気、おう吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。
セレウス菌
河川や土の中など自然界に広く分布している細菌です。土が付きやすい穀類や豆類、香辛料などが主な感染源となり、チャーハンやスパゲッティ、スープなどが原因食品となっています。
毒素の違いによって、症状はおう吐型と下痢型の症状に分けられます。
おう吐型は食後1時間から5時間後、下痢型は食後8時間から16時間後に症状があらわれます。
セレウス菌は熱に強く、加熱による殺菌が難しいのが特徴です。ただし、少量では発症しないため、菌を増やさないことが予防のポイントです。
黄色ブドウ球菌
ブドウ球菌は自然界に広く分布し、人の皮膚やのどにもいます。その中でも食中毒の原因となるのは、黄色ブドウ球菌です。調理する人の手や指に傷があったり、傷口が化膿したりしている場合は、食品を汚染する確率が高くなります。汚染された食品の中で菌が増殖し、毒素がつくられると食中毒を引き起こします。
黄色ブドウ球菌は酸性やアルカリ性の環境でも増殖し、つくられた毒素は熱にも乾燥にも強いという性質があります。汚染された食物を食べると、3時間前後で急激におう吐や吐き気、下痢などが起こります。
ウエルシュ菌
人や動物の腸管や土壌などに広く生息する細菌です。酸素のない所で増殖し、芽胞を作るのが特徴です。
食後6時間から18時間で発症し、下痢と腹痛が主な症状として現れます。
カレー、煮物、麺のつけ汁、野菜煮つけなどの煮込み料理が原因食品となることが多く、対策としては、加熱調理した食品の冷却は速やかに行い、室温で長時間放置しないことです。また、食品を再加熱する場合は、十分に加熱して、早めに食べることがポイントです。
ノロウイルス
ノロウイルスは、手指や食品などを介して、口から体内に入ることによって感染し、腸の中で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。
ノロウイルスに汚染された二枚貝などの食品を十分加熱しないまま食べたり、ノロウイルスに汚染された井戸水などを飲んだりして感染するほか、ノロウイルスに感染した人の手やつば、ふん便、おう吐物などを介して、二次感染するケースもあります。
寄生虫(アニサキス)
アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。長さは2㎝から3㎝、幅は0.5㎜から1㎜くらいで、白色の少し太い糸のように見えます。
アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(不十分な冷凍又は加熱のものを含みます)で食べると、激しい腹痛や吐き気、おう吐などの食中毒症状を引き起こすことがあります。
予防は、鮮度を保ち、目視で確認し、取り除くことが基本です。また、冷凍(-20℃で24時間以上)と加熱(70℃以上または60℃なら1分)が有効です。
食中毒の原因菌は「つけない」「増やさない」「やっつける」
つけない=洗う 分ける
手には様々な雑菌が付着しています。食中毒の原因菌やウイルスを食べ物に付けないように、次のようなときは、必ず手をあらいましょう。
・調理を始める前
・生の肉や魚、卵などを取り扱う前後
・調理の途中で、トイレに行ったり、鼻をかんだりした後
・オムツを交換したり、動物に触れたりした後
・食卓につく前
・残った食品を扱う前
また、生の肉や魚などを切ったまな板などの器具から、加熱しないで食べる野菜などへ菌が付着しないように、使用の都度、綺麗に洗い、できれば殺菌しましょう。加熱しないで食べるものを先に取り扱うのも一つの方法です。焼肉などの場合には、生の肉をつかむ箸と焼けた肉をつかむ箸は別の物にしましょう。食品の保管の際にも、他の食品についた細菌が付着しないよう、密閉容器に入れたり、ラップをかけたりすることが大事です。
増やさない=低温で保存する
細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止します。食べ物に付着した菌を増やさないためには、低温で保存することが重要です。肉や魚などの生鮮食品やお惣菜などは、購入後、できるだけ早く冷蔵庫に入れましょう。なお、冷蔵庫に入れても、細菌はゆっくりと増殖しますので、冷蔵庫を過信せず、早めに食べることが大事です。
やっつける=加熱調理
ほとんどの細菌ウイルスは加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全です。特に肉料理は中心までよく加熱することが大事です。中心部を75℃で1分以上加熱することが目安です。ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも、細菌やウイルスが付着します。特に肉や魚、卵などを使ったあとの調理器具は、洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけて殺菌しましょう。台所用殺菌剤も使用も効果的です。
食中毒の原因ウイルスは「持ち込まない」「ひろげない」「つけない」「やっつける」
(1)持ち込まない=健康状態の把握・管理
調理者等が調理場内にウイルスを持ち込まないためには、ウイルスに感染しない、感染した場合には調理場内に入らないことが必要です。そのためには、日ごろから健康管理や健康状態の把握を行い、おう吐や下痢の症状がある場合などは調理を行わないようにしましょう。
(2)ひろげない=手洗い、定期的な消毒・掃除
万が一、ウイルスが調理場内に持ち込まれても、それが食品ぬい付着しなければ食中毒にいたることはありません。こまめ手洗いを行いましょう。
また、ふきんやまな板、包丁などの調理器具は洗剤でよく洗った後、熱湯消毒を定期的に行いましょう。
細菌やウイルスの付着を防ぐ正しい手の洗い方を身に付け指の間や爪の中まで、石鹸を使ってしっかり洗いましょう。
食中毒を防ぐ6つのポイント
(買い物)
・消費期限を確認する
・肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
・肉や魚などは汁が他の食品につかないように分けてビニール袋
に入れる
・寄り道をしないで、すぐに帰る
(家庭での保存)
・冷凍や冷蔵の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍
庫に保管する
・肉や魚はビニール袋や容器にいれ、他の食品に肉汁などがかか
らないようにする
・肉・魚・卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指
洗う
・冷蔵庫は10℃以下、冷蔵庫は-15℃以下に保つ
・冷蔵庫や冷凍庫に詰め過ぎない(詰め過ぎると冷気の循環が悪
くなる)
(3)下準備
・調理前の前に石鹸で丁寧に手を洗う
・野菜などの食材を流水で綺麗に洗う(カット野菜もよく洗う)
・生肉や魚などの汁が、果物やサラダなそ生で食べるものや調理
の済んだものにかからないいうにする
・生肉や魚、卵を触ったら手を洗う
・包丁やまな板は生用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分け
ると安全
・冷凍食品の解凍は冷蔵庫を利用し、自然解凍をさける
・冷凍食品は使う分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない
・使用後のふきんやタオルは熱湯で煮沸した後しっかり乾燥
させる
・使用後の調理器具は洗った後、熱湯をかけて殺菌する(特に生
肉や魚を切ったまな板や包丁)台所用漂白剤の使用も効果的
(4)調理
・調理の前に手を洗う
・肉や魚は十分に加熱。中心部を75℃で1分間以上の加熱が目安
(5)食事
・食べる前に石鹸で手を洗う
・清潔な食器を使う
・作った料理は、長時間、室温に放置しない
(6)残った食品
・残った食品を扱う前にも手を洗う
・清潔な容器に保存する
・温め直す時も十分に加熱
・時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる
・ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる
食中毒かなと思ったら
おう吐や下痢の症状は、原因物質を排除しようという体の防衛反応です。早めのに医師の診断を受けましょう。